《塔、都市、書簡》というWebで小説投稿しあう企画に参加した
企画情報
詳細はこちら。http://turris.skr.jp/
作品はこちら。http://turris.skr.jp/gallery
概要は「塔、都市、書簡」というキーワードのうち最低2つ以上利用して小説を書く、
それ以外基本的に縛り無し、というもの。
前書き
別に読まなくて良い。
これを書き、ここに設けた意図は、
各作品への感想文はどのような人物によって書かれたかを示すため。
1.参加理由
私は普段物語を書く人ではありません。
小説投稿クラスタとも関係ありません。
ただ、テキストマイニング*1を生業としており、
最近pixivなどで素人の書いたWeb小説をよく扱います。
分析する際ドメイン知識もっと欲しい、投稿者がどんなやりとりして
どんな気持ちで書いてるのか、どうすればもっと投稿/評価/閲覧しやすいか
などを知りたいと思っての参加です。
2.一般的なWeb小説への感想
下記。特に<想い>の部分をご参照下さい。
http://blog.yamcha.jp/article/374341487.html
3.普段何を読んでいるか
海外SFと明治・大正あたりの日本文学。
それらで触れた文豪の手記と学術論文書いた際の指導から、
「物語は本質以外全て削ぎ落とせ」
という思想を持っています。
結果文章に無駄がない*2ものほど高評価する傾向にあります。
各作品の感想
注意:既に公開されてる作品なのでネタバレを含みます。
注意2:すげー率直に書いてるので作者がこれ読むと不快になる可能性があります
楼堂舎『仰げば塔と死』
http://turris.skr.jp/?p=220
まずタイトルが素晴し過ぎる。
文章もわかりやすくて大変良かった。
楽士がリーヴ死んだ理由推理するところから
「自分は嵌められたんだ」って飲み込むシーンまで、
ひっかかりなく進行してて筆力高い。
ただ不明点多くてすっきりしない。
説明足りなすぎる。
結局楽士何者だったの、
リーヴが初対面の時「まるで…」って言いかけたけどなんだったの。
オチがよくわからない。
なんでリーヴは楽士を殺そうとしたの。
兄ちゃん、リーヴなんですぐ死んでしまうん。
他にも色々疑問有って終りが腑に落ちない。
文章そのものは上手くて読みやすいんだけど、
物語として読みやすくはない。
全体的に心理描写が薄い。
察しろって話なのかもしれないけど、私には無理でした。
碧『パプリカの町、空の塔、文字のない手紙』
http://turris.skr.jp/?p=239
文章が凄く上手い。
物語の構成もしっかりしてる。
この企画の中で一番読みやすくて一般ウケする感じ。
オチ弱いのと結局あの少女と呪いって何だったのってのがもうちょっと説明欲しかった。
完成度は一番高いんだけど、こぢんまりまとまってて、
Web小説で私が楽しみにしている奇想が無かった。
全体的に良くできた作品、普通に小説雑誌に載ってそう。
この企画で誰かに一本だけ勧めるとしたらこの作品が順当っぽい。
真悠信彦『日蝕――オカルト小説』
http://turris.skr.jp/?p=174
物語進行と会話のテンポがよい。
誰が何を考えてどういう行動を取って今どうなっているか、
という状況説明がわかりやすいのでスルスル読めた。
魔術都市とか教団とかの面白そうな要素が活かされてなくて、
結局市長の真意などもわからず
「えーと、この話って何がしたいんだっけ」感ある。
南風野さきは『瞬刻幻燈劇』
http://turris.skr.jp/?p=126
美しい文字列ですね。
物語としての情報量は殆ど無くて、
要約したら3行で収るような感じ。
読み終わると特に何も覚えてないんだけど、
読んでるときはなんか美しいなという印象を受ける。
物語というか詩として読んだ。
Web小説らしいWeb小説だなーという感想。
この企画の中では一番個人的に好き。
廃墟アリス『奈落より』『溶暗』
http://turris.skr.jp/?p=118
http://turris.skr.jp/?p=116
読みづらい、目が滑る。
誰が何をやってるのか状況が全然わからない。
テクり過ぎて軸がぶれてる気がする。
言葉選びのセンスが凄い良くて、
読み終わったとき何個かの単語が記憶に残った。
んで言葉遊び部分が凄い上手いのは良いのだけど、
多分それ作者も自覚してて随所に盛込もうとしてるせいで
各文章が物語全体としての整合性取れない感じに孤立して浮いてる。
パーツパーツは素晴しいけど、それがお互い主張しあい過ぎてて
上手く料理に馴染んでない感じがWeb小説っぽいなーと思った。
総評
全員文章上手い、状況説明わかりやすい。
ほぼどれもオチがない/弱い。
淡々と進行して起伏がない。
結果、あまり記憶に残らない。
全部読み終わってから気付いたけど主催者が書いてない。
自分が書いたものについて
「全欲求の父として」http://turris.skr.jp/?p=211
というのを書きました。
中身はSFで、作業時間は5時間程度です。
あらすじは「植民惑星が人口爆発に対処するため宇宙港を作ろうとしたけど、
ヴァン・アレン帯による陽子嵐のせいで電子機器が動かない。
そこで陽子嵐の影響を受けない生体脳コンピュータを
利用して宇宙港を制御することを主人公が思いついたんだけど、
トラブルが発生しちゃったから主人公の脳使うことになったよ」
というものです。
10分足らずで読める分量だと思います。
塔と都市というキーワードから「リングワールド」
「Blame!」などを想起して書きました。
前半はもっと削れたはずだし、逆に後半は軌道エレベータや
なぜ電子コンピュータの小ささが重要なのか、
デブリ対策の不備をなぜ建造時に考慮できなかったのかなどの
説明が不足しているなと成果物を見て思いました。
時間無かったのもあり科学考証はほぼしてません、
単にそれっぽい用語で塗り固めただけです。
陽子が電子コンピュータにとってマジでやばいかとは事実で、
陽子が原子核とぶつかって吐き出す粒子が電荷持つため
メモリの値とかがんがん書き換わるという
(CPUとかの界隈では)よく知られた現象のためです。
単純なミスも多く、
"既に<塔>の他市の殆どが生体脳管理をしているか"
って一文があるんですが、"<塔>の"は不要、これあると話の辻褄合わない。
書いてみてわかった自分の小説書きにおける根本的な問題として、
1.文章下手すぎる
2.物語を書くつもりが無い
の2点があり、1は練習すれば何とかなるかも知れませんが、
2は本当に自分でも驚きました。
私は自分のSF的アイデア(これをSF界隈ではガジェットと呼びます)
を単に説明したいだけであって、別に物語はどうでもいいんだと気付きました。
SF作家としてバリントン・ベイリーやアシモフ、クラークが好きなのですが、
確かに彼ら文章力とか物語というより
ガジェット優先で書いている感じがします。
私は技術的なモノではありますが、文章自体を書くことは多く、
割と小説も書けるのではと思ってましたが、完全に宛が外れました。
この事実に気付いたの相当本人的に意外で面白かったです。
小説書いたことない皆さんも是非書いて欲しいなと思いました。
自分の関心あることがダイレクトに出てきます。
終りに
こういうWeb小説書く企画、なんか色々あるらしいですが
私全然知らないので今回初めて参加してみたら中々楽しかったです。
主催者に感謝、参加者の皆さんお疲れ様でした。
どっかに集まって即興で
「はい、今からルーレットで決めたこのテーマで3時間以内に書け!」
とかやると面白そうなのでいつかやろうという話を某氏としてる。
私はかなり読書好きなので、てっきり小説書きたい人だと思ってたのですが、
実はそうではなかったと知った時の驚きは結構なものでした。
小説書くより統計学の論文書いてるときの方が楽しかった。
物語、それこそ語りたい物が特に無い人っているんだなぁ、
まさか自分がそれだったとはなぁという点が
この企画参加して一番感慨深かったです。
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